ちょっと変わった時計-表裏逆さまの時計 

時計よもやま話

あてもなく時計を探して彷徨っていますと、時折少し変わった時計に巡り合えて小躍りすることがあります。

少し変わっているとは即ち、普通の時計とは異なるわけです。従って、その後メインストリームとなる望みは薄かったり、そもそも個数限定で製作されている場合も多いです。

しかし、そういう時計にこそブランドの性格が垣間見える気がして、非常に興味深いところがあると思います。

本日はその手の変わった時計のうち、『表裏逆さまの時計』を取り上げたいと思います。

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表裏逆さまの時計について

表面に文字盤やインデックス、そして針を備え、裏面には動力部である歯車の輪列があるというのが、一般的な時計の在り方です。近年では、 裏面から機械の仕上げを眺めることができるよう、裏面がグラスバック仕様になっているモデルが結構あります。特に細部まで拘って仕上げを行っている高級ブランドのそれは、かなり見ごたえががあるものです。

通常の時計は表面に文字盤、裏面に輪列 (ムーブメント) があります。

また、物によってはフルスケルトンになっていたり、特殊な機能を備えていたりする場合もありますが、その構成自体はそれほど変わりません。

ところが更にごく一部のブランドでは、普通の時計とは表面と裏面が完全に逆さまになっているものがあります。それが、今回ご紹介する逆さまの時計です。

VOUTILAINEN – 28TI

出典: Voutilainen

まず現在最も話題性があるのは、2019年にカリ・ヴティライネンから発表された28TIでしょう。

一見して分かる通り、本来裏面にあるはずのムーブメントが表面にきているのがわかります。カリ・ヴティライネンは文字盤の美しさでも有名ですが、敢えてその文字盤を排した意欲作とのこと。色調を落ち着いたメタルカラーに寄せることで、機械の美観をより際立たせています。

代償として時刻の視認性は落ちているように思いますが、このクラスの時計はもはや時間を確認するためのツールではないのでしょう。

出典: Voutilainen

表面だけでなく、裏面もかなり興味深い構造になっています。普通の時計だと文字盤で見えなくなっているの部分なので、ある意味こちらの方が珍しいかもしれませんね。

またティアドロップ型のラグが美しいケースは、ホワイトゴールドかプラチナかと思いきやチタン製。サイズは39mmで、厚みは13.4mmになっているようです。やや厚い印象ですが、大半を占めるのがこの特殊なムーブメントに由来するものです。

 Voutilainen Caliber 28 Inverted

  • 直径: 30mm
  • 厚み: 8.45mm
  • 石数: 32
  • パワーリザーブ: 65h
  • 振動数: 18,000 A/h (5Hz)
  • 備考: 自社製ムーブメント

ただこの時計において最も大きな障壁となり得るのは、見た目の突飛さでも視認性の低さでもなく、入手性の低さでしょう。86000スイスフラン(おおよそ1000万円)という価格もさることながら、個数がわずかに8本限定というのが入手の難しさを物語っています。一応プラチナ等のケース素材違いも存在するようですが、価格も入手性も更に困難を極めます。

個人的には、この大きな竜頭がどんな巻き味を生み出しているのかが非常に気になるところではあります。

Glashuette Original – PanoMaticInverse 1-91-02-02-02-50

出典: Glashuette Original

裏表逆さまの時計としては、2014年にグラスヒュッテオリジナルから発表されたパノマティックインバースも有名です。

ドイツ時計の特徴とされる3/4プレートが表面から確認でき、その上にオフセンターの3針仕様となっています。右下には同社の特徴であるダブルスワンネック緩急針が誇らしく鎮座しているだけでなく、ブリッジのエングレービング、テンワのチラネジ等もなかなかに美麗です。

またこの時計の特徴としては、今回ご紹介する中では唯一自動巻きということでしょうか。

出典: Glashuette Original

実はグラスヒュッテオリジナルは、2008年にパノインバースXLというモデルをリリースしています。このパノインバースXLは裏表逆さまの手巻き時計でしたが、これをベースに自動巻きキャリバーを新たに開発したようです。

Glashuette Original Caliber 91-02

  • 自動巻きムーブメント
  • 直径: 38.2mm
  • 厚み: 7.1mm
  • 石数: 49
  • パワーリザーブ: 42h
  • 振動数: 28,800 A/h (4Hz)
  • 備考: 自社製ムーブメント

専用のキャリバー91-02は結構大きめの印象で、その分ケースサイズも42mmとかなり大きく、厚みも12.3mmとボリュームがあります。

ただ、グラスヒュッテオリジナルは全体的に時計に厚みがあり、例えばパノマティックルナなら12.7mmもあります。従って、既存のユーザーならあまり気にならないでしょう。

ヴティライネンに比べて商業ベースで展開されているモデルのため、入手難易度がそれほど高くないのは魅力でしょう。ケース素材がステンレスという事もあり、価格はおよそ150万円程度です。通常のパノシリーズに比べると20%ほど高価ですが、時計の特殊性を鑑みるに比較的手ごろといえるかもしれません。

個人的にはオリジナルのパノマティックルナやパノリザーブの文字盤の雰囲気の方が好みなので、それを差し置いてインバースに手を出すことは無いでしょうが、コレクターの方には垂涎の品になりうるかもしれません。

ちなみにこれの前身となったパノインバースXLは、更に独特の色使いです。これも好みが分かれそうですね。

出典: Glashuette Original

Blancpain – Mouvement Inversé 6616 1527 55B

出典: Blancpain – Manufacture de haute horlogerie

最後に取り上げるのは、2012年にブランパンのヴィルレシリーズから発表された、ムーブメントインバースです。

ヴティライネン同様、表面左上にテンプが確認できますが、ブリッジが全体的に白あるいは黒に色調統一されているのがわかります。この色出しはセラミックによって実現されており、他の2社とはアプローチの仕方がかなり異なることが判ります。

個人的に、このホワイトセラミックの色味はとても好みです。

出典: Blancpain – Manufacture de haute horlogerie

Blancpain Caliber 152B

  • 自社製手巻きムーブメント
  • 直径: 36.1mm
  • 厚み: 2.95mm
  • 石数: 21
  • パワーリザーブ: 40h
  • 振動数: 21,600 A/h (3Hz)
  • 備考: 自社製ムーブメント

更に特筆すべき点として、特殊ムーブメントにも拘らず3mm以下の薄さを実現できています。手巻き2針とはいえ特殊なムーブメントには違いありませんから、薄型を得意とするブランパン(フレデリックピゲ)の面目躍如といったところでしょうか。結果的に、ケース厚も10mm以下に収まっています。

ただその優れた薄さが逆に仇となって、43mmあるケースサイズが余計に大きく感じてしまうところは否めません。ヴィルレの優美なデザイン性を活かすためにも、ケース径はもう少し控えめにした方が良いのではないかなと思います。 幸いこちらも限定品ではなくレギュラーラインとして定着しているようですので、今後のサイズ展開には期待したいところです。ちなみにケース素材がホワイトゴールドということもあり、価格はおおよそ400万円程度です。

 

何にせよ独創的な意欲作というのは、各社の性格が垣間見えるようで、眺めるだけでも面白いものです。

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